法テラスによる費用の立て替え制度は、債務整理など弁護士・司法書士へ依頼したいけれどもまとまったお金を用意できない方に便利な公的な支援制度です。しかし、利用にはデメリットや条件があります。返済方法や債務整理の支払金額を詳しく解説します。
執筆者 竹原万葉
都内在住のライター・編集者。
目次
刑事・民事を問わず法的なトラブルの解決に必要なサービスを提供する法テラス(正式名称:日本司法支援センター)では、経済的に余裕のない方でも無料で法律相談を受けられます。
記事内参照)法テラスの費用の立て替え制度を利用するための条件はこちら
法テラスの費用の立て替え制度には、対象外となる費用もあります
法テラスの費用の立て替え制度では、裁判所へ納付する印紙代、鑑定量、コピー代、通訳の費用、弁護士・司法書士の遠方への交通費などの実費は限度額の範囲内であれば立て替えてもらえます。
限度額を超える金額は原則として自分負担となります。
自己破産では裁判所での手続きが必要です。この際、裁判所に予納金を納めなければなりません。予納金は法テラスによる費用の立て替えの対象外です。
個人再生でも予納金が必要ですが、法テラスによる費用の立て替え制度では立て替えてもらえません。
法テラスによる費用の立て替え制度を利用するにあたってデメリットが発生します。事前に確認しておきましょう。
法テラスによる費用の立て替え制度の利用には審査があります。審査のために書類をそろえたり審査を受けたりするのに時間がかかります。
借金問題の解決を急いでいる方は、立て替え制度を利用せず、弁護士・司法書士事務所が設定している独自の分割払い制度を利用するほうがよいかもしれません。
家族にバレずに法テラス経由で弁護士・司法書士事務所を利用したい方は、法テラスの費用の立て替え制度を利用しないほうがよいでしょう。
法テラスの費用の立て替え制度の利用のための審査の段階で、収入・資産に関する資料を家族の分まで用意する必要があります。家族ではあっても給与明細や預金通帳を預かる機会は通常は少ないはず。不審に思われ気づかれてしまう恐れがあります。
債務整理は費用がかかっても弁護士・司法書士がおすすめ!費用の相場と対処法を解説
法テラスの費用の立て替え制度を利用した場合、分割払いで返済していきます。
法テラスの費用の援助開始が決定し契約をしたら、2カ月後から返済が始まります。
返済額は毎月5,000円~10,000円程度。原則3年以内に返済が終わる金額になるよう法テラスが勘案した上で決定します。
法テラスの費用の返済は、原則として給与・年金等の振り込まれる金融機関口座からの自動引落で支払います。(ゆうちょ銀行だとその他の金融機関よりも引落し手数料が安いです。)
毎月の返済日は15日/25日/27日のいずれかとなります。
いずれの場合でも土日祝日に重なる場合、自動引落日は別の日に移動します。法テラスの「今月の返済日」のWebページでその月の自動引落日が確認できるので、ブックマークしておくとよいでしょう。
参考)今月の返済日|法テラス
法テラスの費用の立て替えの返済は毎月の分割払いのほか、まとめて支払うこともできます。
まとめ払いや残額一括払いは引落日の11営業日以上前に、事前に法テラスへの申し込みが必要です。
法テラスによる費用の立て替えの返済が滞った場合、ハガキや電話で連絡が来ます。
自動引落日に返済金の入金が間に合わず、自動引落が失敗すると、法テラスから返済のためのハガキが送付されます。(ゆうちょ銀行の自動引落手数料も支払う必要があるため、余裕をもって入金しておくと安心です。)
ハガキが払込用紙になっています。払込用紙の支払期限までにコンビニエンスストアで支払いましょう。
法テラスの費用の立替金の返済が滞ると、電話や手紙、訪問による督促や、法テラスが委託した会社から督促されます。
このような督促でも返済しない場合、裁判所に支払督促調停などを申し立てられる可能性があります。法的手続きで回収されるほか、さらに民法で定められた3%の損害金が上乗せされてしまいます。
返済しない理由として「どうしても払えない」こともありますよね。
実は、返済額の決定後でも、法テラスによる費用の立て替えの返済が免除される場合があります。
会社都合や自分自身の都合など様々な理由から働き続けられなくなり収入が得られない状況になりそうになったら、法テラスに相談してみてください。
法テラスによる費用の立て替え制度を利用した場合の返済額の参考として、法テラス埼玉の標準的な決定金額を参考にご紹介します。
任意整理事件
債権者数 | 実費+着手金 | (実費) | (着手金) |
---|---|---|---|
1社 | 4万3,000円 | 1万0,000円 | 3万3,000円~ |
2社 | 6万4,500円 | 1万5,000円 | 4万9,500円 |
3社 | 8万6,000円 | 2万0,000円 | 6万6,000円 |
4社 | 10万8,000円 | 2万0,000円 | 8万8,000円 |
5社 | 13万5,000円 | 2万5,000円 | 11万0,000円 |
6~10社 | 17万9,000円 | 2万5,000円 | 15万4,000円 |
11~20社 | 20万6,000円 | 3万0,000円 | 17万6,000円 |
21社以上 | 23万3,000円 | 3万5,000円 | 19万8,000円 |
※過払い金がある場合、別途、報酬金がかかります。
自己破産事件
債権者数 | 実費+着手金 | (実費) | (着手金) |
---|---|---|---|
1~10社 | 15万5,000円 | 2万3,000円 | 13万2,000円 |
11~20社 | 17万7,000円 | 2万3,000円 | 15万4,000円 |
21社以上 | 21万0,000円 | 2万3,000円 | 18万7,000円 |
※過払い金がある場合、別途、報酬金がかかります。
民事再生事件
債権者数 | 実費+着手金 | (実費) | (着手金) |
---|---|---|---|
1~10社 | 20万0,000円 | 3万5,000円 | 16万5,000円 |
11~20社 | 22万2,000円 | 3万5,000円 | 18万7,000円 |
21社以上 | 25万5,000円 | 3万5,000円 | 22万0,000円 |
※過払い金がある場合、別途、報酬金がかかります。
出典:弁護士費用・司法書士費用の目安|日本司法支援センター 法テラス(法テラス埼玉の例 2020年6月12日;表記を表形式に改変)
法テラスによる費用の立て替え制度を利用するには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
事前に審査を受ける必要があり、書類の用意や時間的余裕が必要な点にも注意が必要です。
法テラスによる費用の立て替え制度を利用するための条件の他に
という基準に注意が必要です。
人数 | 手取月収額の基準※1 | 家賃又は住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額※2 |
---|---|---|
1人 | 18万2,000円以下 (20万200円以下) |
4万1,000円以下 (5万3,000円以下) |
2人 | 25万1,000円以下 (27万6,100円以下) |
5万3,000円以下 (6万8,000円以下) |
3人 | 27万2,000円以下 (29万9,200円以下) |
6万6,000円以下 (8万5,000円以下) |
4人 | 29万9,000円以下 (32万8,900円以下) |
7万1,000円以下 (9万2,000円以下) |
※1:東京、大阪など生活保護一級地の場合、()内の基準を適用します。以下、同居家族が1名増加する毎に基準額に30,000円(33,000円)を加算します。
※2:申込者等が、家賃又は住宅ローンを負担している場合、基準表の額を限度に、負担額を基準に加算できます。居住地が東京都特別区の場合、()内の基準を適用します。
人数 | 資産合計額の基準※1 |
---|---|
1人 | 180万円以下 |
2人 | 250万円以下 |
3人 | 270万円以下 |
4人以上 | 300万円以下 |
※1:将来負担すべき医療費、教育費などの出費がある場合は相当額が控除されます。(無料法律相談の場合は、3カ月以内に出費予定があることが条件です。)
出典)法テラス」よる費用立て替えについて|日本司法支援センター 法テラス
法テラスによる費用の立て替え制度は、弁護士・司法書士の費用の捻出が難しい方に便利な制度です。
弁護士・司法書士事務所への支払いに不安のある方でも相談しやすいですが、利用に条件があるほか、家族に知られる恐れなどもあります。
債務整理を急いでいる方や家族に内緒にしたい方は、法テラスだけでなく他の弁護士・司法書士事務所の無料相談を利用しながら並行して相談を進めていくのがおすすめです。最も自分に合った債務整理の方法を見つけやすいですよ。
法テラスの費用の立て替え制度の
利用のポイント