役員借入金で資金繰り|仕訳・契約書・利息・返済の実務と長期化リスク

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この記事で分かること

  • 役員借入金の入金・返済・利息の仕訳例と、帳簿へ入れる前に確認する前提条件
  • 金銭消費貸借契約書・議事録・振込記録として残す内容と、税務調査で困らない記録の作り方
  • 認定利息の考え方と無利息で問題になるケース、残高が長期化したときの融資審査・相続への影響

会社の資金が足りないとき、社長個人のお金で一時的に補うことは珍しくありません。

ただし、契約書も振込記録も残さずに入金すると、税務調査で「貸付か出資か不明」と指摘されるリスクがあります。

結論として、役員借入金は短期の資金繰り手段として使えますが、金銭消費貸借契約書と振込記録を残し、必要な社内承認の議事録も保管したうえで、利息と返済条件を決めておくことが前提です。

残高が長期化すると、融資審査・相続・事業承継で不利に働く場合があるため、計画的に返済しましょう。

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この記事の結論

  • 役員借入金は短期の資金繰りに使えるが、契約書・振込記録と必要な社内承認の議事録を残し、利息と返済条件を明確にすることが前提
  • 残高が長期化すると融資審査・相続・事業承継に影響し得るため、計画的に返済する
  • 解消方法は計画返済が基本であり、債務免除やDESは税務リスクがあるため実行前に税理士へ相談する
目次

役員借入金は短期の資金繰りに使えるが、記録と条件設定が前提になる

役員借入金とは|会社が役員から借りるお金

役員借入金とは、会社が代表取締役や取締役などの役員個人からお金を借りたときに使う勘定科目です。

貸借対照表(B/S)では負債の部に計上されます。

返済期限が1年以内であれば流動負債の「短期借入金」、1年を超える場合は固定負債の「長期借入金」に分類するのが原則です。

中小企業では「役員借入金」の科目名で一括管理している場合もありますが、決算時には返済予定に合わせて区分しましょう。

役員貸付金との違い|貸し借りの向きとB/S・銀行評価が逆になる

役員借入金役員貸付金は、名前が似ていますが貸し借りの向きが逆です。

混同すると仕訳を間違えるだけでなく、税務上の取り扱いも変わります

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項目役員借入金役員貸付金
定義会社が役員から借りる会社が役員へ貸す
B/S上の位置負債の部資産の部
銀行評価の傾向長期安定なら疑似資本として評価される場合がある回収見込みが低いとマイナス評価になりやすい
無利息の税務リスク法人側に原則として課税リスクが生じにくい基準となる利息と実際の利息との差額が、役員の給与として課税される場合がある
自社のB/Sで「役員借入金」と「役員貸付金」のどちらに該当するかを確認しましょう。

この表で重要なのは、貸し借りの方向が逆になると税務上の扱いと銀行評価が大きく変わる点です。
自社の取引がどちらに該当するか、B/Sの勘定科目を確認しましょう。

入金・返済・利息の仕訳例|前提条件を確認してから帳簿へ入れる

役員借入金に関する仕訳は、入金時・返済時・利息計上の3パターンが基本です。

以下は前提条件を固定した仮定例であり、自社の金額・利率・返済条件に置き換えて使ってください

仕訳例の前提条件

  • 借入額:500万円(仮定)
  • 利率:年1.3%(計算のための仮定。役員が会社へ貸すときの必須利率ではない)
  • 入出金方法:銀行振込

実際の仕訳は、借入額・利率・返済方法・決算期によって変わります。

帳簿へ入れる前に顧問税理士へ確認しましょう。

入金時の仕訳|普通預金で受け入れる

役員から会社の口座へ振り込まれた時点で、次のように仕訳します。

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借方科目金額貸方科目
普通預金5,000,000円役員借入金
仮定条件に基づく仕訳例です。現金手渡しは客観的な証拠が残りにくいため、振込で入金しましょう。

返済時の仕訳|元本と利息を分けて処理する

元本を返済する場合は、役員借入金の残高を減らします。

この例では、借りた500万円の元本を6か月間返済せず、その後に元本50万円と6か月分の利息32,500円を同時に支払うと仮定します。

利息は元本返済と別の行で計上します。

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取引借方科目金額貸方科目
元本返済役員借入金500,000円普通預金
利息支払い支払利息32,500円
利息額は500万円 × 年1.3% × 6か月 ÷ 12か月 = 32,500円の按分例です。実際の計算は利率・期間・日割りの方法で変わります。

利息を計上する仕訳|決算時の未払利息処理

決算日時点で未払いの利息がある場合は、支払利息と未払費用を計上します

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借方科目金額貸方科目
支払利息未払分の利息額未払費用
未払利息の金額は、残高 × 利率 × 経過日数 ÷ 365 で計算します。

仕訳例はいずれも前提条件に基づく仮定です。
役員報酬との相殺処理や、複数回に分けた返済など、実際の処理は取引内容によって異なります。

不明な点は顧問税理士へ確認しましょう。

契約書・議事録・振込記録|税務調査で困らないために残す3点

役員借入金の実態を説明するため、金銭消費貸借契約書と振込記録を残し、社内承認が必要な場合は議事録も保管しましょう

貸付の条件と実際の入出金を説明できるように、必要な書類をそろえておきましょう。

金銭消費貸借契約書に書く内容

契約書には、最低限以下の項目を記載しましょう。

  • 契約当事者(貸し手=役員個人、借り手=法人)
  • 借入金額
  • 利率(無利息の場合はその旨を明記)
  • 返済期限と返済方法(一括・分割)
  • 契約日と署名・押印
  • 収入印紙の貼付(印紙税法に基づく税額)

金銭消費貸借契約書は印紙税法上の第1号文書に該当し、契約金額に応じた収入印紙が必要です。

主な金額帯の印紙税額は次のとおりです。

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契約金額印紙税額
1万円未満非課税
1万円以上 100万円以下200円
100万円超 500万円以下2,000円
500万円超 1,000万円以下10,000円
1,000万円超 5,000万円以下20,000円
国税庁「印紙税額一覧表」に基づく税額です。最新の税額は国税庁サイトで確認してください。

取締役会議事録(株主総会議事録)の作成

会社と役員個人の利益がぶつかるおそれがある取引を「利益相反取引」といい、社内承認が必要になる場合があります。

自社が取締役会を置く会社か、借入条件はどうなっているかを弁護士へ伝え、承認の要否と必要な議事録を確認しましょう

承認が必要な場合、取締役会を置く会社では取締役会、置かない会社では株主総会で事前承認を受けます。
議事録には議案、決議内容、出席者などを記録しましょう。

銀行振込で証拠を残す理由

入金と返済は、銀行振込で行うことを強くすすめます。

振込明細は日付・金額・振込人が記録された客観的な証拠になります。

現金で手渡しした場合、入出金の事実を第三者に証明することが難しくなります。

税務調査では「本当にお金が動いたか」が問われるため、口座間の振込記録を残しましょう。

利息と返済条件の決め方|貸し借りの向きで税務上の扱いが変わる

役員借入金の利息設定では、「法人が役員から借りる場合」「法人が役員へ貸す場合」で税務上の扱いが異なります。

会社が役員へ貸すときの利率の基準を、役員から会社へ貸す契約へそのまま当てはめないようにしましょう。

認定利息の利率と計算の考え方

法人が役員へお金を貸す場合(役員貸付金)に無利息や低い利息とすると、役員が受けた利益が給与として課税される場合があります。

国税庁No.2606「金銭を貸し付けたとき」が扱うのは、会社が役員へ貸す場合です。

上の役員借入金の仕訳例とは、お金の向きが逆です。

ここでいう「認定利息」は、税務上の基準となる利息です。

実際に受け取る利息との差額が、原則として役員の給与として課税されます

会社が他から借りた資金を貸す場合はその借入利率、それ以外は貸付年に応じた利率などを確認します。

適用する基準と例外を国税庁の説明や税理士に確認しましょう。

※仕訳例の年1.3%は計算上の仮定であり、会社が役員へ貸す場合の最新の基準利率を示すものではありません。

無利息で貸した場合に問題になるケースとならないケース

無利息の取り扱いは、貸し借りの方向で変わります

次の表で自社の取引がどちらに該当するかを確認しましょう。

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ケース無利息の税務上の扱い注意点
法人が役員から借りる(役員借入金)法人側に課税リスクは原則として生じにくい「常に問題ない」とは限らない。利率を決めて契約書に明記する方が安全
法人が役員へ貸す(役員貸付金)基準となる利息と実際の利息との差額が、原則として役員の給与として課税される国税庁No.2606で貸付資金の調達方法・貸付年に応じた基準と例外を確認する
取引の方向を誤解したまま「無利息で大丈夫」と判断すると、税務リスクが生じます。

役員借入金(法人が役員から借りる方向)であっても、金額が大きい場合や長期化する場合は、利率と返済スケジュールを契約書に明記しておく方が税務調査で説明しやすくなります。

なお、役員貸付金の認定利息にはNo.2606で定める例外があります。
災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要になった場合の合理的な貸付けや、利息の差額が年間5,000円以下の少額な場合は、給与として課税されません。

ただし、例外に該当するかは個別の状況によるため、顧問税理士へ確認しましょう。

残高が長期化すると融資審査・相続・事業承継に影響し得る

役員借入金は短期で返済すれば問題になりにくい一方、残高が膨らんだまま何年も放置すると、銀行の融資審査・役員死亡時の相続・事業承継の3つに影響する場合があります。

融資審査での扱い|疑似資本として評価される場合と不利になる場合

銀行によっては、返済要求されにくい長期安定の役員借入金を「疑似資本(実質的な自己資本)」として評価する場合があります。

具体的には、返済期限を設けていない過去に返済要求をしていない実績がある役員本人に十分な資金力があるといった条件がそろうと、プラスに評価されやすくなります。

一方で、返済要求リスクが高い、または役員の資金力に不安があると判断されれば、マイナス評価につながる場合もあります。

もっとも、融資審査での扱いは銀行ごとに異なるため、個別の判定を保証することはできません。
融資を受ける予定がある場合は、顧問税理士や金融機関と事前に相談し、残高の説明ができるよう準備しましょう。

相続・事業承継への影響|貸付金は相続財産になる

役員が会社に貸したお金(役員側から見ると貸付金)は、その役員が亡くなったときに相続財産に算入されます。

原則として額面で評価されるため、たとえば残高が3,000万円あれば、現金がなくても3,000万円の相続財産として相続税の対象になり得ます

事業承継の場面でも、会社に対する貸付金が残っていると、後継者や相続人が返済請求権を引き継ぐことになり、会社の資金繰りに影響します。

残高が大きい場合は、生前のうちに計画的な返済または専門家を交えた対策を検討しましょう。

解消方法の方向性|返済が基本、それ以外は専門家確認が前提

役員借入金の残高を減らすには、計画的な返済が基本です。

返済以外にも解消方法はありますが、いずれも税務上のリスクがあるため、実行前に必ず税理士または公認会計士へ相談してください。

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方法概要税務上の主なリスク
計画返済毎月または毎期、資金に余裕があるときに返済するリスクは低い。返済計画を契約書に沿って実行する
債務免除役員が会社への貸付金を放棄する免除額が法人の益金(債務免除益)になり、法人税が増える場合がある
DES貸付金を資本金に振り替える(デット・エクイティ・スワップ)時価評価で予想外の課税が生じる場合がある。資本金増加による税負担増にも注意
生命保険の活用役員の死亡保険金で会社が返済原資を確保する保険料の損金算入要件、解約返戻率、保障内容を確認する必要がある
現物返済会社の資産で返済に充てる時価と簿価の差額で法人に課税が生じる場合がある
計画返済以外の方法は、いずれも税理士・公認会計士への事前相談が前提です。

この表は各方法の方向性を整理したものであり、具体的な税額や手続きは個別の状況によって変わります。
自己判断で債務免除やDESを実行すると、予想外の税負担が発生する場合があるため、必ず専門家に相談しましょう。

専門家に相談するタイミングと相談先

役員借入金に関して専門家へ相談すべきタイミングは、次のとおりです。

  • 契約書・議事録の作成時:社内承認の要否と必要書類を弁護士に、会計・税務処理を税理士に確認する
  • 残高が長期化し始めたとき:返済計画の策定と融資審査への影響を税理士に相談する
  • 債務免除・DES・資本振替を検討するとき:法人税・みなし贈与・資本金増加の影響を税理士・公認会計士に確認する
  • 相続・事業承継の計画時:貸付金の相続財産化と対策を税理士・公認会計士・弁護士に相談する

相談前に、現在の役員借入金の残高、契約書の有無、利息の設定状況、返済実績を整理しておくと、専門家の助言を受けやすくなります。

顧問税理士がいない場合は、税理士の初回無料相談を活用することも選択肢の一つです。

【Q&A】役員借入金の疑問に答える

最後に、役員借入金で迷いやすい点をQ&Aで整理します。

役員が会社に無利息で貸した場合、税務上の問題は生じますか?

法人が役員から借りる方向(役員借入金)であれば、無利息でも法人側に課税リスクは原則として生じにくいとされています。

ただし、金額が大きい場合や長期化する場合は、利率と返済スケジュールを契約書に明記しておく方が安全です。

逆に法人が役員へ貸す方向(役員貸付金)では、基準となる利息と実際の利息との差額が役員の給与として課税される場合があります。

まず取引の方向を確認しましょう。

金銭消費貸借契約書がないとどうなりますか?

契約書がないと、税務調査で「貸付か出資か不明」と指摘されるリスクが高まります。

契約当事者・借入金額・利率・返済期限と返済方法・契約日と署名押印・収入印紙の貼付を記載した金銭消費貸借契約書を作成しましょう。

あわせて銀行振込記録を残し、社内承認が必要な場合は取締役会または株主総会の議事録も保管しましょう。

役員借入金の残高が大きいと銀行融資に影響しますか?

銀行によっては、返済要求されにくい長期安定の役員借入金を「疑似資本」として評価する場合があります。

一方で、返済要求リスクが高い場合や役員の資金力に不安がある場合は、マイナス評価につながることもあります。

融資審査での扱いは銀行ごとに異なるため、融資を受ける予定がある場合は顧問税理士や金融機関と事前に相談しましょう。

役員が亡くなった場合、役員借入金はどうなりますか?

役員が会社に貸したお金は、その役員が亡くなったときに相続財産に算入されます。

原則として額面で評価されるため、残高が大きいほど相続税の対象額が増える場合があります。

残高が大きい場合は、生前のうちに計画的な返済や専門家を交えた対策を検討しましょう。

役員借入金を債務免除で消すことはできますか?

役員が会社への貸付金を放棄(債務免除)すれば残高は消えますが、免除額が法人の益金(債務免除益)になり、法人税が増える場合があります。

計画返済が基本です。

債務免除やDES(デット・エクイティ・スワップ)を検討する場合は、実行前に必ず税理士または公認会計士へ相談してください。

終わりに|役員借入金は記録と計画で短期の資金繰り手段にできる

役員借入金は短期の資金繰り手段として使えますが、契約書・振込記録と必要な社内承認の議事録を残し、利息と返済条件を明確にすることが前提です。

残高が長期化すると融資審査・相続・事業承継に影響し得るため、計画的に返済しましょう。

まず確認すべきことは、自社のB/Sで役員借入金と役員貸付金を区別し、契約書と振込記録がそろっているかです。

不足している書類があれば、顧問税理士と相談して早めに整備しましょう。

解消方法を検討する場合も、必ず専門家へ事前に相談してください。

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引用・参考出典

引用・参考出典は、次のとおりです。

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