ソーシャルレンディングにはリスクがある一方、他の金融商品よりも高い利回りという魅力もあります。投資するならリスクを軽減するための対策が重要です。
ソーシャルレンディングで元本割れ・配当遅れなどのトラブルを避けるための方法を確認していきましょう。
執筆者 竹原万葉
都内在住のライター・編集者。
目次
ソーシャルレンディングは、少額投資ができ運用の手間がかからず預貯金等より高い利回りが得られると人気ですが、知っておくべきリスクもあります。
ソーシャルレンディングのリスク
それぞれのリスクでどのように損をしてしまう可能性があるのか、見ていきましょう。
ソーシャルレンディングでは、投資家から集めたお金を貸付け、利率を上乗せして返済してもらうことで、利益を得ます。
しかし、高い利回りや貸付先の運用の失敗などにより、以下のようなトラブルが起こる可能性があります。
貸付先の返済が滞ると、元本割れ・分配遅れが起こるリスクがあるほか、最悪のケースでは貸し倒れにより元本・分配金が支払われなくなってしまいます。ソーシャルレンディングは投資信託などと同様に元本保証ではないため、注意が必要です。
ソーシャルレンディング事業者はファンドの運用実績を公開しています。過去に元本割れ・配当遅れがあったか、あればその理由を必ずチェックしましょう!
ソーシャルレンディングでは正しく貸付金が返済されても元本割れするリスクがあります。
海外の貸付先へ外貨建てで貸し付けると、貸付け時から返済時までの間に為替相場に大きな変動があり円高となった場合に、元本割れしてしまうのです。
災害や戦争など予測の難しい出来事による影響があり得ます。
ソーシャルレンディングの為替連動リスクの例をわかりやすい表で確認してみましょう。
米ドル立てで100万円出資、期待利回りが10%で110万円の返済」の見込みで投資したとします。
為替相場の変動前 | 為替相場の変動後 | |
---|---|---|
為替相場 | 1米ドル/100円 | 1米ドル/90円 |
貸付額(米ドル) | 100万米ドル | 100万米ドル |
利回り | 10%(予定) | -10%(実際) |
返済額(日本円) | 100万円(予定) | 90万円 |
仮に10円分だけ円高になったとすると、両替後の日本円の償還額(元本+利息)は90万円となってしまいます(両替等の手数料は除く)。
予定利回りが110万円であったものが90万円に目減りしてしていますね。このリスクは長期だけでなく短期の貸し付けでも起こり得ます。
為替相場が影響するようなファンドは、為替相場に詳しい方や、時間的拘束がなく即座に売買・解約などの手続きのできる方以外はかなり慎重に検討したほうがよいでしょう。
担保付きのファンドにもリスクがあります。
当初の評価額が高すぎたり、何らかの事情で担保の価値が低下してしまったりすると、担保となっている物件を売却しても貸付金が回収しきれないことがあります。
ソーシャルレンディング事業者がどのような審査のうえで貸し付けるかをよく確認しましょう!
ソーシャルレンディングには流動性が低く現金化できないリスクもあります。
ソーシャルレンディングは、原則として、償還日まで途中解約できません。株式や投資信託のように任意のタイミングで売買して現金化できないのです。
もし何らかの事情で生活資金に困ったとしても好きな時に投資資金を取り戻せないため、余裕資金をすべてソーシャルレンディングへ投資するのはおすすめできません。
他の投資商品と組み合わせて分散投資することや、ある程度資産を手元に残すことをおすすめします。
ソーシャルレンディングを運営しているソーシャルレンディング事業者が事業継続できなくなるリスクもあります。
ソーシャルレンディング業者が業務継続できなくなる理由の例
資金繰りが難しくなることによる破綻以外にも、出資金を募集内容と異なる使い途に充てることなどを理由とした行政処分でも営業停止となることがあります。
近年の例では、2021年6月8日、SBIソーシャルレンディング株式会社が、募集内容の虚偽の表示等により業務停止命令・業務改善命令を受けました。(業務停止は2021年6月8日~同年7月7日まで。)
参考:SBIソーシャルレンディング株式会社に対する行政処分について|関東財務局
参考:当社貸付先の重大な懸案事項に関する第三者委員会の調査報告と再発防止策等について|SBIソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングサービス選びでは、運営する事業者が有名企業のグループだからと単純に信頼するのではなく、過去の実績のチェックをしっかり行うことが大切です。
ソーシャルレンディングサービスを利用するに当たって、リスクを軽減することは可能です。そのためには、ソーシャルレンディング事業者とファンドを慎重に選ぶことが不可欠です。
ソーシャルレンディングでの投資の注目ポイント
ソーシャルレンディングでリスクをなるべく抑えながら投資するためのポイントを確認していきましょう。
ソーシャルレンディングでの投資では、ソーシャルレンディング事業者(貸付人)と、貸付先である資金需要者(借入人)の両方の信用が鍵になります。
ソーシャルレンディング事業者の審査が甘いと、貸付先からの回収が遅れたり回収できなくなったりするリスクが高まります。
ソーシャルレンディング事業者・貸付先の財務情報だけでなく、それぞれの経営陣の経歴や運営体制、最近の人事異動などを確認し、適切に運用できるかどうかよく吟味しましょう。
ソーシャルレンディング事業者の償還実績を必ず確認しましょう。ソーシャルレンディング事業者の実績は、各社のサイトで一覧で公開されています。
これまでに元本割れ・配当遅れがあったか、またどのような事情によるものかを詳しく確認することが大切です。
一般的なソーシャルレンディングサービスが組成するファンドの予定利回りは年率3~7%です。中にはもっと高い利回りとなっているファンドもあります。
予定利回りが高ければ高いほど儲かるように思えてしまいますが、利回りが高いということは、すなわち貸付先の支払うべき利息も高いということ。分配金は一定期間ごとに利息部分を元手に配当される仕組みなので、利息の支払いは重要です。
高い利回りのファンドへの投資を検討する際は、ソーシャルファンディング事業者の運用実績で分配遅延の有無を確認するほか、貸付先の財務情報や事業内容を確認するほか、同業界の展望や同業他社の財務情報なども確認したほうがよいでしょう。
一般的なソーシャルレンディングのファンドの運用期間は、短くて3カ月程度、長くて24カ月(2年)程度が多いです。
投資には余裕資金を回すものというのが前提とはいえ、運用期間が長いと生活環境の変化により現金が必要になることもあるでしょう。
また、社会情勢の変化により貸付先の事業継続が難しくなり元本割れ・配当遅れが発生したり、貸付先の状況変化により予定の運用期間よりも早い元本返済(早期償還)により分配金の配当回数が減って予定利回りを下回ったりする可能性もあります。
運用期間が長期のファンドではさまざまな要因による変化を覚悟しなければなりません。「元々なかった」「全部失ってもかまわない」と思えるお金を余裕資金と考えて投資するのが安全です。
担保付きのファンドへの投資を考える際に気をつけたいのは、ソーシャルレンディング事業者による貸付先の担保の査定額です。
担保の査定額が高すぎると、元本割れ・配当遅れの際に売却額が必要額に満たず、デフォルト(貸し倒れ)、引いてはソーシャルレンディング事業者の破綻につながりかねません。
銀行などの金融機関では数週間~1カ月をかけて融資を決定しますが、ソーシャルレンディング事業者の場は早いと数日で融資が決まることも多いです。短期間で妥当な査定のできるのか、ソーシャルレンディング事業者の体制や運営をよく確認しましょう。
担保となるのは主に土地などの不動産。自社だけでなく第三者の不動産会社に査定を外注するソーシャルレンディング事業者の例もあります。投資したい担保付きのファンドでの査定がどのように行われているのか、問合せるのもおすすめです。
日本国内よりも経済成長の著しい外国の貸付先への貸付けを行うファンドもありますが、外貨建ての貸付けは為替変動リスクを伴います。
投資家のリスク軽減のために、為替変動リスクを貸付先が負う契約のファンドや、為替変動リスクを考えて予め決めておいたレートで両替する契約のファンドもあります。必ず契約内容を詳細まで確認するようにしてください。
為替レートを予め決めているファンドでは、両替のタイミングで当初よりも円高となった時には助かりますが、円安となった時には差益のうま味が小さくなる点はあきらめる必要があります。
ソーシャルレンディング事業者を見極める上で重要なポイントは他にもあります。
金融商品取引法では、ファンドを募集してファンドビジネスを行う事業者に第二種金融商品取引業の登録を義務づけています。
ソーシャルレンディング事業者もファンドビジネスを行う事業者ですから、第二種金融商品取引業の登録が必要です。
第二種金融商品取引業に登録している業者は、一般社団法人第二種金融商品取引業協会の公開している会員情報(正会員 名簿)で確認できます。
参考: 正会員 名簿|会員情報|一般社団法人第二種金融商品取引業協会 (※リンク先ページの「会員情報」にExcelファイルへのリンクが表示されます。)
ソーシャルレンディング事業者の公式サイトの下部(フッター)や会社概要に登録番号が書かれていることも多いです。念のため、実際に登録があるか裏付けを取るようにすると安心ですね。
ソーシャルレンディングでは、以前は貸金業法に抵触しないように貸付先を匿名化した状態での出資が行われていました。
しかし、募集時と異なる貸付けを行う、あるファンドの償還に別のファンドの出資金を充てるなどの問題により行政処分を受けるソーシャルレンディング事業者が増えました。
利用するソーシャルレンディングサービスの事業者が適切に運営しているかを確かめることは、投資する資産を守るうえで重要です。第二種金融商品取引業協会のサイトでは、登録している正会員の行政処分の記録を確認できます。過去に不正が明らかになっていたかを確かめられますよ。
参考: 正会員の処分|会員情報|一般社団法人第二種金融商品取引業協会 (※リンク先ページの「正会員の処分」で社名をクリックするとPDFファイルが表示されます。)
ソーシャルレンディング事業者の行政処分が相次いだことから、金融庁の方針によりソーシャルレンディング業界では貸付先の情報公開を行う動きが起きています※。
※参考:ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください|金融庁
ソーシャルレンディングで避けたいのは、貸付先の貸し倒れやソーシャルレンディング事業者の破綻です。
悪質なソーシャルレンディングで投資家が被害に遭わないように、金融庁はソーシャルレンディングで見極めるべきポイントをまとめてくれています。
など。
すでにソーシャルレンディングを始めている方もチェックしてみてください。今後の投資や、現在投資しているソーシャルレンディングの事業者・ファンドの見通しを考えるうえで役立ちますよ。
実際にソーシャルレンディングサービスを比較してみましょう。
高い利回りとはどのくらいなのか、募集総額と総募集件数の比率はどうかなど、かなり異なることがわかります。
AGクラウドファンディング | Funds | SAMURAI FUND | |
---|---|---|---|
![]() |
![]() |
![]() |
|
募集総額 | 10億円以上 | 約176億 ※1 | 貸付型 約51億円 事業型 3,972万円 |
総募集件数 ※2 | 9件 | 174件 | 貸付型 374件 事業型 2件 |
サービス開始 | 2021年 | 2019年 | 2015年 |
予定利回り ※2 | 1.26~1.38% | 1.0~6.0% | 3.75~11.00% |
最低投資額 | 1万円~ | 1円~ | 1万円~ |
公式 | 公式 | 公式 |
※1:集計期間:2019年1月23日~2022年2月28日
※2:2022年2月末日時点
国内最大級のソーシャルレンディングサービスのFundsや、2015年から事業継続し幅広い利回りのSAMURAI FUNDはサービス開始直後は予定利回りの高いファンドが多めでしたが、最近の予定利回りは比較的低めの傾向にあります。
サービス開始から間もないAGクラウドファンディングは予定利回りは低めで手堅い印象です。
ソーシャルレンディングのリスクを減らしたいなら、信頼できるソーシャルレンディング事業者(貸付人)と貸付先の資金需要者(借入人)に投資することが大切です。
貸付人と借入人の信頼できる例として、アイフルファンドのAGクラウドファンディングをご紹介します。
アイフルファンドの行う「AGクラウドファンディング」は、創業55年を迎える消費者金融業者で東証一部上場企業のアイフル株式会社に対して貸付けを行うソーシャルレンディングサービスです。
貸付先が同グループであるため、利息、つまり利回りは低めとなっています。
貸付先が東証一部上場企業で消費者金融大手のアイフルであることや、利回りが低めであることは、リスク軽減に役立つ材料ですね。
アイフルファンド自体がアイフルグループであるため、低リスク・低リターンとなっています。
とはいえ、低リスク・低リターンの金融商品の中では利回りは高いほうです。例えば、メガバンクであっても定期預金の利回りは0.002%。AGクラウドファンディングの運用中・募集中のファンドは1.26~1.38%ですので、預貯金よりも高い利回りが見込めます。
ファンド名 | 予定利回り | 運用期間 | 募集金額 | 運用状況 |
---|---|---|---|---|
アイフルファンド#8 | 1.26% | 12カ月 | 8,781万円 | 募集終了 |
アイフルファンド#6 | 1.30% | 6カ月 | 5億円 | 運用中 |
アイフルファンド#7 | 1.30% | 12カ月 | 10億円 | 運用中 |
アイフルファンド#2 | 1.38% | 5カ月 | 1億円 | 運用中 |
アイフルファンド#5 | 1.38% | 6カ月 | 2億円 | 運用中 |
出典:ファンド一覧|AGクラウドファンディング
※2022年2月末時点
※運用状況は「募集開始→募集中→募集終了→成立→運用中→運用終了」の順に遷移
ファンド一覧を確認すると2022年2月末時点では、運用期間は5カ月~12カ月に収まっており、6カ月が最多。アイフルファンドは国内企業のアイフルが貸付先なので為替変動リスクも低いと考えられます。
アイフルファンドのAGクラウドファンディングのファンドは、最低投資額が10,000円と少額から投資できます。
少額から投資可能なので複数のファンドに分散投資することや、他社や別種の金融商品と組み合わせることで、分散投資しやすいのもメリットの一つです。
貸付先が東証一部上場企業かつ業界大手であり、為替変動リスクの影響を受けやすい製造業などでもないこと、また利回りが高くないことから、リスクを抑えやすいです。投資やソーシャルレンディング初心者の方の「まずは少し試して仕組みを理解したい」というニーズにマッチします。
所在地 | 〒105-0014 東京都港区芝二丁目31番19号 バンザイビル8F |
---|---|
代表取締役 | 川瀬 光英 |
登録番号 | 第二種金融商品取引業 関東財務局長(金商)第3272号 |
加入協会 | 一般社団法人 第二種金融商品取引業協会 |
ソーシャルレンディングは投資家にとって預貯金などよりも予定利回りが大きい点が魅力ですが、リスクがあるのも事実。最後に、ソーシャルレンディングのリスクをまとめて確認しておきましょう。
ソーシャルレンディングのトラブルとリスク
ソーシャルレンディングは銀行よりも手軽に融資してもらえることから借り手にも人気です。ますます注目を集める成長中の投資商品の一つであるソーシャルレンディングをぜひこの機会に検討してみませんか?
関連キーワード
この記事でわかること