債務整理 2023/12/28

法テラスの費用立て替え制度の流れ|利用できる基準やメリット・デメリットを紹介

法テラスによる費用の立て替え制度は、債務整理など弁護士・司法書士へ依頼したいけれどもまとまったお金を用意できない方にとって便利な制度です。

しかし、利用するための条件なども存在します。そこで、今回は法テラスの立て替え制度について、実際の利用方法やメリット・デメリット、費用感などを詳しく解説していきます。

竹原万葉

執筆者 竹原万葉

都内在住のライター・編集者。

目次

法テラスとは/使うとどうなる?

出典:法テラス

「法テラス」は金銭面的に厳しい方が、債務整理などお金のことから離婚まで、無料の法律相談や弁護士・司法書士の費用などの立替えをおこないます。

おもな業務は以下の通りです。

「情報提供業務」→無料で法制度に関する情報が手に入る

情報提供業務とは、法制度や相談機関に関する情報を相談者に応じて紹介していきます。

対応方法も電話、窓口、メールと充実。自分が知りたい法に関する情報を無料で知ることができます。

「民事法律扶助業務」→弁護士・司法書士の費用を立て替えてもらえる

法テラスによる弁護士・司法書士事務所の費用の立て替え制度の仕組み

経済的に余裕のない方などが法的トラブルにあったときに、無料で法律相談を行い、必要な場合は弁護士・司法書士の費用等の立て替えを行う業務です。

まとまったお金がないから弁護士に依頼できないとお悩みの方でも気軽に依頼できます。

便利な制度ですが、弁護士費用はあくまで一時的に立て替えてもらったもの。数年かけて法テラスに返済していく必要があるので、注意してください。

法テラスを利用するための条件

法テラスのサービスはすべての人が受けられるわけではありません。

ここでは法テラスのサービスを受けられる基準について紹介していきます。

事前審査を受ける必要がある

事前に審査を受ける必要があり、書類の用意や時間的な余裕も必要です。

審査に必要な書類

  • 資力※1を証明する書類(申込者及び配偶者)
    例:給与明細(直近2ヵ月)、賞与明細・源泉徴収票・生活保護受給証明書(援助申込みから3ヵ月以内に発行されたもの)など
  • 資力申告書
  • 世帯全員の住民票の写し
  • 割賦償還に用いる口座に係る資料
  • 事件に関する書類

※1:資本を出し得る力。財力のこと

収入要件と資産要件には注意が必要

法テラスによる費用の立て替え制度を利用するための条件の他に

  • 申込者や同居家族の手取り月収額(収入要件)
  • 不動産・有価証券・預貯金などの資産の合計額(資産要件)が基準を下回ること

という基準に注意が必要です。

法テラスの費用の立て替え制度利用の収入要件

  • 申込者及び配偶者(以下、「申込者等」)の手取り月収額(賞与を含む)が下表の基準を満たしていることが要件となります。
  • 離婚事件などで配偶者が相手方のときは収入を合算しません。
  • 申込者等と同居している家族の収入は、家計の貢献の範囲で申込者の収入に合算します。
人数 手取月収額の基準※2 家賃又は住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額※3
1人 18万2,000円以下
(20万200円以下)
4万1,000円以下
(5万3,000円以下)
2人 25万1,000円以下
(27万6,100円以下)
5万3,000円以下
(6万8,000円以下)
3人 27万2,000円以下
(29万9,200円以下)
6万6,000円以下
(8万5,000円以下)
4人 29万9,000円以下
(32万8,900円以下)
7万1,000円以下
(9万2,000円以下)

※2:東京、大阪など生活保護一級地の場合、()内の基準を適用します。以下、同居家族が1名増加する毎に基準額に30,000円(33,000円)を加算します。
※3:申込者等が、家賃又は住宅ローンを負担している場合、基準表の額を限度に、負担額を基準に加算できます。居住地が東京都特別区の場合、()内の基準を適用します。

法テラスの費用の立て替え制度利用の資産要件

  • 申込者及び配偶者(以下、「申込者等」)が、不動産(自宅や係争物件を除く)、有価証券などの資産を有する場合は、その時価と現金、預貯金との合計額が下表の基準を満たしていることが要件となります。(※無料法律相談の場合は、申込者等の有する「現金、預貯金の合計額」のみで判断します。)
  • 離婚事件などで配偶者が相手方のときは資産を合算しません。
人数 資産合計額の基準※4
1人 180万円以下
2人 250万円以下
3人 270万円以下
4人以上 300万円以下

※4:将来負担すべき医療費、教育費などの出費がある場合は相当額が控除されます。(無料法律相談の場合は、3カ月以内に出費予定があることが条件です。)

出典)法テラス」よる費用立て替えについて|日本司法支援センター 法テラス

法テラスの弁護士・司法書士の費用の例

法テラスによる費用の立て替え制度を利用した場合の返済額の参考として、法テラス埼玉の標準的な決定金額を参考にご紹介します。

離婚事件

実費 着手金
調停 20,000円 110,000円
調停不調後の訴訟原告 35,000円 165,000円

※別途、報酬金がかかります。

強制執行事件

実費 着手金
20,000円 66,000円

※別途、報酬金がかかります。

示談交渉事件

実費 着手金
20,000円 88,000円

※別途、報酬金がかかります。

任意整理事件

債権者数 実費+着手金 (実費) (着手金)
1社 43,000円 10,000円 33,000円~
2社 64,500円 15,000円 49,500円
3社 86,000円 20,000円 66,000円
4社 108,000円 20,000円 88,000円
5社 135,000円 25,000円 110,000円
6~10社 179,000円 25,000円 154,000円
11~20社 206,000円 30,000円 176,000円
21社以上 233,000円 35,000円 198,000円

※過払い金がある場合、別途、報酬金がかかります。

自己破産事件

債権者数 実費+着手金 (実費) (着手金)
1~10社 155,000円 23,000円 132,000円
11~20社 177,000円 23,000円 154,000円
21社以上 210,000円 23,000円 187,000円

※過払い金がある場合、別途、報酬金がかかります。

民事再生事件

債権者数 実費+着手金 (実費) (着手金)
1~10社 200,000円 35,000円 165,000円
11~20社 222,000円 35,000円 187,000円
21社以上 255,000円 35,000円 220,000円

※過払い金がある場合、別途、報酬金がかかります。

出典:弁護士費用・司法書士費用の目安|日本司法支援センター 法テラス(法テラス埼玉の例 2020年6月12日;表記を表形式に改変)

費用支払いの流れ

法テラスの費用の立て替え制度を利用した場合、後日分割払いで返済していきます。

返済は契約を交わした2か月後からスタート

法テラスへの返済に関しては、援助開始の契約をした2カ月後から返済が始まります。

返済額は毎月5,000円〜10,000円程度原則3年以内に返済が終わる金額になるよう法テラスが勘案した上で決定します。

引き落とし日は決まっている

お金のイメージ

毎月の返済日は15日/25日/27日のいずれか。返済金は原則として、給与・年金等の振り込まれる金融機関口座からの自動引落で支払います。(ゆうちょ銀行だとその他の金融機関よりも引落し手数料が安いです。)

返却日が土日祝日に重なる場合、自動引落日は別の日に移動。法テラスの「今月の返済日」のWebページでその月の自動引落日が確認できるので、ブックマークしておくとよいでしょう。

参考)今月の返済日|法テラス

まとめて引き落とすことも可能

法テラスの費用の立て替えの返済は毎月の分割払いのほか、数ヶ月分をまとめて支払うこともできます。

まとめ払いや残額一括払いは引落日の11営業日以上前に、事前に法テラスへの申し込みが必要です。

立て替え制度の対象外となる費用もある

拒否する店員のイメージ

法テラス経由で利用しても一部立替えの対象外になる費用もあります。

限度額を超える費用は自己負担になる

法テラスの費用の立て替え制度では、裁判所へ納付する印紙代、鑑定料、コピー代、通訳の費用、弁護士・司法書士の遠方への交通費などの実費は限度額の範囲内であれば立て替えてもらえます。

限度額を超える金額は原則として自己負担となります。

自己破産の予納金は自己負担になる

自己破産の際に裁判所に払う予納金※5は、法テラスによる費用の立て替えの対象外で自己負担です。金額は同時廃止事件は2万円、少額管財事件は20万円、通常管財事件は50万円以上となります。

自己負担となりますが、生活保護受給者に限り払う必要はありません

自己破産についてはこちらをご覧ください

個人再生の予納金は自己負担になる

個人再生も自己破産同様に裁判所に払う予納金※5は自分で負担する必要があります。

予納金の金額は15万円〜20万円程度です。

※5:破産・個人再生手続きの際に裁判所に支払う費用

利用するメリット・デメリット

ここからは法テラスで「民事法律扶助業務」を利用した際のメリット・デメリットを紹介していきます。

メリット→金銭面的なサポートが大きい

直接弁護士に依頼するより、費用が安くできること。分割での返済も少額で返せるなど金銭面的なメリットが大きいでしょう。

安い費用で依頼ができる

利用する一番のメリットは安く弁護士・司法書士に依頼できる点です。

着手金や成功報酬など通常より安く設定されていることもポイント。「弁護士に依頼したいけどお金がないから依頼できない」とお悩みの方でも気軽に依頼できますよ。

分割額も低く設定されている

分割で費用は払っていくこと自体は、直接弁護士事務所に依頼しても可能なことが多いです。

しかし、法テラスなら月々の分割費用が5,000円〜10,000円ほどと安く設定されています。普通の弁護士事務所の分割払いなら、月々数万円以上の返済が多いので、少額で返していけるのは嬉しいですね。

デメリット→通常より多くの時間がかかる

法テラスを仲介するため、申請や弁護士への依頼は時間がかかってしまいます。また、必要書類で家族に法テラスを利用しようとしていることもわかってしまうので、急いで解決したい方、周りに知られたくない方には不向きでしょう。

申請に時間がかかる

費用の立て替え制度の利用には審査が必要です。審査のために書類をそろえたり審査を受けたりするのに時間がかかります。

特に借金問題の解決を急いでいる方は、法テラスを利用せず、弁護士・司法書士事務所が設定している独自の分割払い制度を利用するほうがよいかもしれません。

費用を払えないと法的措置を取られる可能性がある

返済が滞った場合、法テラスからの督促を無視し続けると法的措置を取られる可能性があります。

費用が支払えなかった時の対策などは、下記記事を参照ください。

家族に知られる可能性が高い

法テラスでは審査の段階で、収入・資産に関する資料を家族の分まで用意する必要があります。家族であっても給与明細や預金通帳を預かる機会は少ないはず。不審に思われ気づかれてしまう恐れがあります。

家族にバレずに弁護士・司法書士事務所を利用したい方は、法テラスを介さず直接依頼した方がいいでしょう。

債務整理などで直接弁護士に依頼するなら、おすすめの法律事務所を紹介している下記記事をご覧ください。

【まとめ】費用がなくてもOK!まずは相談から

法テラスによる費用の立て替え制度は、弁護士・司法書士の費用の捻出が難しい方に便利な制度です。

法テラスの費用の立て替え制度の利用のポイント

  • 費用の立て替えには審査があり時間がかかる
  • 審査に必要な資料集めにともない家族にバレる可能性がある
  • 返済は契約から2カ月後から
  • 返済額は月額5,000円~10,000円
  • 原則として3年以内に返済し終えるプラン
  • 給与・年金等の口座から毎月自動引落
  • 返済ができないことが続くと電話・訪問の督促、裁判所を利用した回収も
  • 法テラスによる費用の立て替え制度の対象外の費用もある

弁護士・司法書士事務所への支払いに不安のある方でも相談しやすいですが、利用に条件があるほか、家族に知られる恐れなどもあります。

債務整理を急いでいる方や家族に内緒にしたい方は、法テラスだけでなく他の弁護士・司法書士事務所の無料相談を利用しながら並行して相談を進めていくのがおすすめです。最も自分に合った債務整理の方法を見つけやすいですよ。

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